チキソトロピー性を付与する油系増粘剤

化粧品にチキソトロピー性を付与するメリット

　化粧品に光沢や厚みを付与したり、化粧持ちを良くしたりするには、一般的に基剤油中の高粘度油の配合割合を増やす必要があります。しかし、これは使用感が重くなるというデメリットにつながります。反対に、低粘度油の割合を増やすと使用感は軽くなりますが、光沢や厚みが損なわれ、化粧持ちも悪くなってしまいます。

　この使用感と機能性のバランスという課題を解決するのが、油へのチキソトロピー性の付与です。チキソトロピー性とは、かき混ぜると粘度が低下し、静置すると元の粘度に戻るという可逆的な性質のことです。チキソトロピー性を付与することで、静置時には高い粘度を保ちながら、使用時には低い粘度を実現できます。

 

高級脂肪酸エイコサン二酸グリセリル（ノムコートHK-G、ノムコートSG）

高級脂肪酸エイコサン二酸グリセリルなどの油系増粘剤は、このチキソトロピー性を示す可逆的なゲルを形成することで、化粧品の機能性を向上させます。そのため、幅広い処方設計に利用されています。

　特に高級脂肪酸エイコサン二酸グリセリルは、油系増粘剤の中でも加熱溶解が容易で、ハンドリング性に優れています。少量の添加で油にチキソトロピー性を付与し、使用感の改善など、様々な機能向上に貢献します。このゲルは微細な結晶の集合体による可逆的なゲル構造を有し、構造回復性を示すため、クレンジングオイルやリップグロスの機能性向上に効果的です。さらに、乳化物や粉体分散物に少量添加することで、化粧品の安定性改善も期待できます。
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【参考文献】
1) 柴田 翔太, 松澤　誠, 大山 慶一. チキソトロピー性を有する油系増粘剤 高級脂肪酸エイコサン二酸グリセリル. Cosmetic Science. 2024年8月号. p.52-59.